『薬学部の新しい臨床教育』
薬学教育6年制がもたらした教育の変化
2006年より薬学教育6年制がスタートしましたが、教育現場では何か変化はありましたでしょうか?
大井先生
まず、6年制になりモデルコア・カリキュラム注)が分野ごとに策定されました。
また特徴として5年次にOSCE(調剤技能や態度を評価する臨床能力試験)、CBT(コンピュータを用いた知識と問題解決能力を評価する試験)に合格した者が、薬局と病院にそれぞれ11週間実習にいきます。実習までに基礎的な知識を学び、実習を通じて現場での経験を積みます。実習担当施設も指導項目が増えましたし、当然、我々教員の教育内容も増えました。
2年間、就学期間が増えたわけですから教員の方も大変でしょうね。
大井先生
例えば薬局でのセルフメディケーションやコミュニケーションを教えるコミュニティーファーマシー注)といった科目も増え、より細分化され専門性も増しています。しかし、年限延長した2年間を知識の詰め込みに終始してはいけません。薬剤師に求められているスキルとは、待ったなしの臨床で耐えうる素養を持っているかどうかです。なぜなら医療を取り巻く社会環境が大きく変化し、薬剤師の職能拡大が進み、求められるものも多様化しています。
注)医学教育モデル・コア・カリキュラム(平成19 年度改訂版)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/033/toushin/1217987_1703.html
注)コミュニティーファーマシー Community Pharmacy :地域薬局
臨床に近くなった薬剤師
以前は病院勤務の薬剤師と言えば、調剤室にいるというイメージがあるのですが、最近では臨床スキルの向上が求められているようですが、これは何故でしょうか?
大井先生
学生に実施したアンケートを見ても、「未だに薬剤師は調剤室にいる」というイメージを持っている学生が多いのは事実です。実際に、早期体験学習などで薬剤師が病院や薬局で活躍している姿を見て驚いています。薬剤師が患者さんの治療に参画しているという状況を鑑み、教育も当然変っていかなければなりません。
確かに、ここ最近は、病院経営の問題、医療事故など環境は様変わりしてきています。
これが関係しているということでしょうか?
大井先生
もちろん薬剤師も例外ではありません。例えば、患者さんが薬に関して敏感になっていて、薬剤師に説明を求めてくる場面が増えてきています。薬の成分、副作用の情報をより詳しく知りたいという患者さんの声です。薬の説明に薬剤師が出ていく機会が増えたり、病棟に薬を届けたり、また副作用モニタリングを行う機会が著しく増えてきています。ひと昔前ですと、病院が処方した薬に対して説明を求める患者さんがいたでしょうか。少なかったでしょう。良い意味で患者さんの権利意識と薬に対する関心が高くなっています。薬局でも薬の成分が記載された情報提供書を添付してい ますね。
そういえば、薬局にいくと薬の成分が記載された紙が入っています。インターネットでも薬の情報を提供していたりします。
大井先生
薬剤師の職域も増えており、その一つとして在宅患者さんの服薬指導といったものもあります。以前は比較的に容易に長期入院もできていたと思いますが、現在では診療保険体制も変り、在院日数が減らされる方向にあります。そうしますと、在宅患者さんが増え、中には知らぬうちに薬を多量に摂取してしまっているケースも出て きてしまいます。薬剤師が正しい服薬指導を行い、薬を整理してあげなければイベント注)につながる場合もあるのです。病棟では、感染制御や副作用対策など職能が拡大しています。これらが薬剤師に臨床スキルが必要だとされる理由のひとつと言えるでしょう。
注)薬を飲むことで、何か良くないことが起きてしまうこと。






