『 新人看護師の早期離職の防止には教育体制の充実が必要 』
聞き手(=IMI):
姫路聖マリア病院様は、看護教育に非常に熱心であるとお聞きしています。
今、看護教育に力を注でいる理由をお聞かせ下さい。
山中先生:
新人看護師の不安やリアリティーショック等が原因の早期離職を解消したいということが理由です。早期離職につながる理由の一つに、看護師の臨床経験の少なさからくる恐怖や不安があると思います。昔は、同じ患者さんと長期間関わり、繰り返し経験できたので、自信につながっていました。現在は、昔に比べ余裕がなくなっていています。「平均在院日数」の短縮に伴い、1人の患者さんから繰り返し経験する機会が著しく減っています。臨床以外の仕事、電子カルテ化に伴う業務も増えました。医療事故の問題がクローズアップされる昨今では、「技術力の低い新人には触って欲しくない。」というように、患者さん自身の意識も変化しています。病院を取り巻く環境が以前とは全く異なっているということです。この変化の中で、旧体然とした看護教育体制や方法では、新人の技術力と現場の要求するレベルのギャップをなかなか埋めることは出来ません。そのため、現在の医療環境にあった、新たな看護教育方法を押し進める必要があると考えています。現在、新人看護職の離職率は全国平均で9.2%と言われていますが、当病院では、それよりはるかに低い数字で留まっています。
聞き手:
看護学校を卒業し病院に来て、忙しさに戸惑う看護師さんもいると聞いています。
山中先生:
学生時代と病院のギャップにリアリティーショックを起こしているのではないでしょうか。看護学校での教育は講義形式が中心で、技術研修は単に基本技術の操作方法や手技の域を超えていません。
一方、臨床現場で求められる事は、患者さんの状況に合わせて対応できる「臨床技術」であり、具体的には、観察力・判断力・行動力です。この「技術」に対する、学校教育と病院の認識の違いに、大きなギャップがあり、新人看護師が驚くのも無理はありません。
また、これらの臨床看護に必要なスキルを体得し、自信をつけるよう支援しなければ、新人の不安やリアリティーショックも解決できません。日常の業務も充分にはこなせないでしょう。従って、この溝はどうしても埋める必要があるのです。
聞き手:
姫路聖マリア病院様では、「厚生労働省 平成20年度新人看護師臨床実践能力向上推進事業(新人看護師研修・教育担当者研修)」のモデル事業に認定されていますが、具体的にはどういったことを行われているのでしょうか。
山中先生:
当病院では新人看護師の教育と同時にその指導にあたる教育担当者も育てようという教育プログラムを行っています。看護学生の臨床研修も年間1700人ほど受け入れています。看護教育は、腰を据えて行っていきたと考えています。また効率と成果も求めています。
聞き手:
新人看護師と教育担当者も育てるということですね。このプログラムの中で高機能患者シミュレータを使用しておられるのですね?
シミュレータ教育の内容についてお聞きしてもよろしいでしょうか。
山中先生:
まず、このプログラムでは、教育担当者も、受講者である新人看護職も、全て就業時間内に参加して頂きます。講習期間は1か月間で、基本的にシナリオ化した症例を再現し、高機能患者シミュレータによる教育を進めます。シナリオ内容については事前に教育担当者が、症例の決定と症例ごとにグループを組み検討し、作成しておきます。プログラムの最初の一週間は、教育担当者たちが実際に高機能シミュレータの生体機能を活用し、徹底的に内容と教え方の検証を行います。その際に、高機能患者シミュレータの入力操作や機能についても習得します。さらに、教育担当者がインストラクター役と新人看護職役に分かれて、担当症例のシナリオに沿ってシミュレーションを繰り返し練習します。このプロセスを通じ、どのような教え方をしたら良いのか、受講生に体得して貰いたいポイントは何なのか、コミュニケーションをどのようにとったら良いのかなど、新人看護職教育に必要な指導スキルとポイントを教育担当者自身が確認し、学びます。
そして、次の週からの3週間は本番の教育実践となります。受講者の新人看護職にはシミュレーション予定の4症例を伝え、事前学習をしておくように求めます。実際に当たるのは、この内の2症例だけですが、どれがあたるか分かりませんので、受講者は全ての症例について勉強しておく必要があります。シミュレーションは1症例に2名と少人数制で3時間かけます。同一症例を1回だけシミュレートするのではなく、知識が固定化するまで、反復してシミュレーションを行うシステムを取っています。
尚、今回は成人喘息、低血糖、誤嚥、食道静脈瘤破裂を課題症例としています。






